雄大な御在所岳のパノラマから関宿の歴史情緒、新名所VISONまで。鈴鹿山麓の自然と街道風情、食の魅力を巡る三重中北部の爽快ドライブコースをご紹介します。

伊勢志摩の海岸線や伊勢神宮参拝のイメージが強い三重県ですが、実は車を走らせることで真価を発揮するのが、鈴鹿山脈のダイナミックな自然と旧街道の歴史情緒が共存する中北部エリアです。名古屋や関西方面からのアクセスも良好なこの地域には、山岳絶景を望む高原道路、日本屈指の由緒を誇る古社、江戸時代の宿場町の面影をそのまま残す町並み、そして現代の食と癒しが集う大型複合施設まで、多彩なドライブスポットがコンパクトにまとまっています。

四季折々の表情を見せる鈴鹿の山並みを背景に走る爽快なルートは、日常の喧騒を離れてリフレッシュするのにぴったりです。新緑が芽吹く春、涼風吹き抜ける夏の高原、紅葉に染まる秋、樹氷や雪景色が広がる冬と、いつ訪れても違った表情で旅人を迎えてくれます。ひとり旅で気ままに絶景を巡るもよし、大切な人と街道の風情やグルメを楽しむもよし。今回は、三重中北部を一日で贅沢に巡るおすすめのドライブコースと各スポットの魅力、立ち寄り情報をたっぷりとお届けします。

御在所ロープウエイ:鈴鹿山脈の主峰が魅せる空中散歩と四季の山岳パノラマ

鈴鹿国定公園の中心に位置する御在所岳(標高1212メートル)は、奇岩怪石と豊かな植生で知られる名峰です。その山麓の湯の山温泉と標高1188メートルの山頂公園を結ぶのが「御在所ロープウエイ」です。昭和34年(1959年)に開通して以来、半世紀以上にわたって多くの人々に親しまれてきたこのロープウェイは、全長2161メートル、高低差約780メートルを約15分で結び、かつては世界有数の規模を誇りました。

車窓から望む山肌には、花崗岩が風化してできた「おばれ岩」や「地蔵岩」といった巨大な奇岩が点在し、大自然が気の遠くなるような歳月をかけて創り出した造形美を間近に鑑賞できます。また、ロープウェイを支える「白鉄塔」は高さ61メートルを誇り、御在所岳の象徴的なシンボルとして親しまれています。山麓から標高が上がるにつれて気温がぐんぐん下がり、視界が開けていくダイナミックな空中散歩は、ドライブ旅のクライマックスにふさわしい爽快感をもたらしてくれます。

山頂に到着すると、整備された遊歩道が広がり、展望台からは伊勢平野や伊勢湾、遠くは知多半島や富士山まで見渡せる大パノラマが展開します。四季の彩りも鮮やかで、春はツツジやサクラが山を飾り、夏は平地より10度近く涼しい避暑地となり、秋は10月中旬から11月下旬にかけて山頂から山麓へとグラデーションを描きながら紅葉が下りてきます。冬には美しい樹氷や氷瀑(人工氷瀑)が現れ、純白の幻想的な世界を楽しむことができます。

おすすめの時間帯は、大気中の湿度が比較的低く視界がクリアな午前中の早い時間帯です。特に紅葉シーズンやゴールデンウィークなどのハイシーズンは、午前10時を過ぎるとロープウェイ乗り場周辺の駐車場が満車になることがあります。混雑を避けるなら、運行開始直後の時間に合わせて到着するスケジュールを組むのが賢明です。

アクセスは新名神高速道路「菰野IC」から国道477号(湯の山街道)を経由して約10分。東名阪自動車道「四日市IC」からは約30分で山麓の湯の山温泉・ロープウェイ駅に到着します。ドライブの合間には、山麓に広がる開湯1300年の歴史を持つ湯の山温泉の日帰り入浴施設に立ち寄り、旅の疲れを名湯で癒やすのもおすすめです。近隣には地元食材を活かした自然派カフェやベーカリーも点在しています。

椿大神社:鈴鹿の霊峰を背に鎮座するみちびきの総本宮

御在所岳の南東麓、鈴鹿市山本町に鎮座する「椿大神社(つばきおおかみやしろ)」は、全国に約2000社ある猿田彦大神を祀る神社の総本宮として信仰を集める古社です。創建は垂仁天皇27年(紀元前3年)と伝えられ、伊勢国一の宮として名高い歴史を誇ります。御祭神の猿田彦大神は、天孫降臨の際に天孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を高千穂へと先導したことから、「みちびきの祖神」として交通安全や開運、道開きの御神徳で知られています。

背後にそびえる入道ヶ岳(標高906メートル)をはじめとする鈴鹿の峰々を神体山として仰ぎ、境内は凛とした神聖な空気に包まれています。樹齢数百年の杉や檜の巨木が立ち並ぶ参道を一歩進むごとに、周囲の喧騒が遠のき、心が洗われるような静寂が広がります。ドライブの安全祈願はもちろん、人生の岐路に立つ人々が新たな一歩を踏み出すための祈りを捧げる場所として、全国から参拝者が絶えません。

境内には、芸能の神様として親しまれる天之鈿女命(あめのうずめのみこと)を祀る別宮「椿岸神社(つばききしじんじゃ)」も鎮座しています。こちらは夫婦円満や縁結びの社としても有名で、社殿の脇にある「かなえ滝」は、上流の金龍明神の滝から流れる御神水が流れ落ちる清らかなスポットです。この滝の写真をスマートフォンの待ち受けにすると願い事が叶うと口コミで広まり、幅広い世代の参拝客に親しまれています。

おすすめの参拝時間帯は、朝の静寂が保たれている午前8時から10時頃です。山の清浄な空気が最も濃密に感じられ、混雑することなくゆっくりと境内を巡ることができます。新緑が美しい5月や紅葉が映える11月は格別の風情があります。

アクセスは新名神高速道路「鈴鹿PAスマートIC」から車でわずか約2分、東名阪自動車道「鈴鹿IC」からは約5分と、高速道路からのアクセスが抜群です。神社の周辺には名物の「椿とりめし」を味わえる食事処があり、素朴ながら鶏肉の旨味とお米の甘みが絶妙な郷土の味を堪能できます。参拝後の昼食やお土産としてぜひ味わってみてください。

東海道 関宿:往時の賑わいを色濃く残す宿場町の町並みと歴史散歩

鈴鹿の山麓から南へ車を走らせると、江戸時代の面影をそのまま現代に留める「東海道 関宿(せきじゅく)」に到着します。東海道五十三次の47番目の宿場町である関宿は、古代三関の一つ「鈴鹿関」が置かれた交通の要衝であり、江戸時代には東海道と伊勢別街道、大和街道が分岐する宿場として大いに栄えました。東西約1.8キロメートルにわたる旧街道沿いには、江戸時代から明治時代にかけて建てられた町家が200軒以上も連なり、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

関宿の大きな特徴は、電柱が地中化され、往時の街道景観が驚くほど美しく保存されている点です。全国各地の宿場町の中でも、これほどの規模と密度で古い町家が連続して残っている場所は珍しく、一歩足を踏み入れればまるで江戸時代にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えます。格子戸や虫籠窓(むしこまど)、漆喰壁など、当時の建築様式を今に伝える建物が軒を連ね、それぞれの家には往時の屋号を記した木製の看板が掲げられています。

街道沿いには、旅籠(はたご)として使われていた建物を公開している「関宿旅籠玉屋歴史資料館」や、関宿の町並みを一望できる「眺関亭(ちょうかんてい)」など、歴史を肌で感じられる見どころが点在しています。また、街道を歩いていると、軒下にツバメの巣が見られたり、地元の方々が手入れをしている季節の花々が飾られていたりと、今も人々の暮らしが息づいている温もりを感じられるのも関宿の大きな魅力です。

おすすめの時間帯は、観光客が比較的落ち着いている午前10時前後、または夕暮れ時です。特に夕暮れ時は、古い町家の連なりに夕日が差し込み、ノスタルジックな陰影が生まれて息をのむほど美しい情景が広がります。散策の所要時間は町並み全体を歩いて約60〜90分です。

アクセスは名阪国道「関IC」から車で約5分。旧街道のすぐ北側と南側に観光客用の無料駐車場が整備されているため、車を停めてのんびりと徒歩散策を楽しむことができます。周辺には、関宿の歴史を学べる「関まちなみ資料館」や、古民家を改装した落ち着いた雰囲気のカフェがあり、散策の途中で自家焙煎珈琲や地元食材のランチを楽しむのに最適です。

VISON(ヴィソン):日本最大級の商業リゾートで三重の食と文化を五感で体験

関宿の歴史情緒を満喫した後は、伊勢自動車道を南下して多気町にある日本最大級の商業リゾート「VISON(ヴィソン)」へ。2021年にオープンしたこの広大な施設は、東京ドーム約24個分(約119ヘクタール)もの広大な敷地を誇り、「命を喜ばせる場所」をコンセプトに、三重県をはじめ全国の食、オーガニック農園、温浴施設、宿泊施設が融合した複合リゾートです。

多気(たき)という地名は「多くの気(命)を育む場所」に由来し、古くから豊かな自然と清流に恵まれてきました。VISONはその豊かな地形と森林をできる限り残しながら、建築家の隈研吾氏らが手がけた木造建築やモダンなデザインの建物が里山の風景と調和するように配置されています。敷地内は「マルシェ ヴィソン」「スウィーツ ヴィレッジ」「本草エリア」「木育エリア」など9つの個性豊かなエリアに分かれており、車でエリア間を移動することも可能です。

特に注目したいのが「サンセバスチャン通り」です。世界屈指の美食の街として名高いスペインのサン・セバスティアン市と多気町が友好提携を結んだことから誕生したこのエリアには、現地の人気バルが日本初出店し、本場のピンチョスやタパスを気軽に味わうことができます。また、「和ヴィソン」エリアでは、味噌、醤油、味醂、鰹節、昆布といった日本の伝統調味料や出汁の工房・専門店が集結し、職人の技と発酵文化の深さに触れることができます。

おすすめの時間帯は、ランチやカフェタイムを兼ねた午後早い時間帯(12時〜15時)です。広大な敷地のため、午後からのんびりと滞在して買い物を楽しみ、夕方に本草湯で夕景を眺めながら入浴するという過ごし方がドライブの締めくくりとして最高です。週末や休日はマルシェ周辺の駐車場が混み合いますが、敷地内には複数の駐車場が用意されているため、目的地に近い駐車場を事前に確認して入場するのがスムーズです。

アクセスは紀勢自動車道「勢和多気IC」からすぐ、または伊勢スマートIC(ETC専用)直結と、車でのアクセスが極めて快適です。高速道路のインターチェンジと直結しているため、ドライブの最終目的地として立ち寄り、そのままスムーズに帰路につくことができる絶好のロケーションです。

中北部爽快周遊1日ドライブモデルプラン

鈴鹿山脈のダイナミックな山岳美から由緒ある神社、江戸時代の宿場町、そして最新の食のテーマパークまで、三重中北部の魅力を一日で効率よく巡るタイムスケジュールです。高速道路と一般道を巧みに組み合わせ、快適なドライブを楽しめる構成にしています。

旅のヒント:快適なドライブ旅のために

三重中北部エリアを快適に楽しむための、服装、持ち物、ベストシーズンなどの実用的なアドバイスをまとめました。

服装と持ち物

御在所岳の山頂は、平地と比べて気温が約8〜10度低くなります。夏場でも風が強い日は肌寒く感じることがあるため、薄手のウィンドブレーカーやカーディガンなど羽織るものを車に常備しておくと重宝します。春先や晩秋、冬に訪れる場合は、手袋やマフラー、防寒アウターが必須です。また、関宿の町並み散策や御在所山頂の遊歩道、広大なVISONの敷地内を歩くため、履き慣れたスニーカーやフラットシューズでの参加が基本となります。

ベストシーズンと季節の魅力

ドライブに最もおすすめの時期は、新緑が眩しい5月から6月上旬、および紅葉が山を染め上げる10月下旬から11月中旬です。特に秋の紅葉は、御在所岳の山頂(10月中旬)から中腹、山麓へと約1ヶ月以上かけて色が移り変わり、街道沿いの木々も美しく色づきます。冬期(12月下旬〜2月)に御在所岳を訪れる場合は、山麓の道路でも急な降雪や路面凍結が発生することがあるため、スタッドレスタイヤの装着やチェーンの携行を必ず確認してください。

雨の日の代替案

もしドライブ当日に雨が降ってしまった場合でも、このルートは十分に楽しむことができます。御在所岳の山頂が霧や雨で見通しが利かない場合は、山麓の湯の山温泉にある複合温泉リゾート施設「アクアイグニス」に立ち寄り、源泉かけ流しの温泉や有名パティシエの手がけるスイーツを満喫するのがおすすめです。また、VISONのマルシェや和ヴィソンの店舗群、関宿の旅籠資料館などは屋内中心で鑑賞や買い物が可能なため、天候に左右されずに三重の文化と食を堪能できます。

よくある質問

Q. レンタカーを借りる場合、どこの駅を発着にするのが便利ですか?
A. 名古屋方面からアクセスする場合は「近鉄四日市駅」または「JR名古屋駅」、関西方面から向かう場合は「近鉄津駅」や「JR亀山駅」周辺でレンタカーを手配するのが便利です。特に近鉄四日市駅周辺には大手レンタカー各社の営業所が集まっており、高速道路のインターチェンジにも近いため、中北部ドライブの拠点として非常に使い勝手が良いです。

Q. 高速道路のETCカードは必要ですか?
A. ETCカードの携行を強くおすすめします。今回のルート上にある新名神高速道路「鈴鹿PAスマートIC」や、VISON直結の「多気ヴィソンスマートIC」など、ETC専用のインターチェンジを利用することで移動時間を大幅に短縮できます。一般レーンでは出入りできない箇所があるため、車載器へのカード挿入を事前に確認しておきましょう。

Q. VISONの駐車場料金の仕組みはどうなっていますか?
A. VISONの駐車場はスマートカメラ方式を採用しています。駐車券の発券はなく、出庫前に入口ゲートで撮影された車両ナンバーを精算機に入力して精算します。施設内の各店舗での飲食やお買い物金額に応じて駐車料金の割引サービスが受けられるため、レシートは捨てずに保管しておき、各店舗のレジで駐車サービス券(QRコードなど)を受け取るのを忘れないようにしてください。

Q. 関宿の散策に駐車場代はかかりますか?
A. 関宿には、亀山市が運営する観光客向けの無料駐車場が街道沿いに複数整備されています。代表的なものとして「関の東追分駐車場」や「関宿観光駐車場」などがあり、普通車を無料で停めることができます。大型連休などを除けば比較的スムーズに駐車可能です。

まとめ

鈴鹿山脈の壮大な山岳パノラマを望む「御在所ロープウエイ」、人生の新たな道を照らす「椿大神社」、江戸時代の街道文化を今に伝える「東海道 関宿」、そして最新の食と癒しのリゾート「VISON」。三重県中北部を巡るドライブは、わずか1日の行程の中に、大自然の躍動、悠久の歴史、伝統の技、そして豊かな美食が凝縮された魅力的なルートです。

車窓を流れる四季折々の景色を楽しみながら、アクセルを踏むたびに新しい感動に出会えるのがドライブ旅の醍醐味です。次の週末はハンドルを握り、海だけではない奥深い魅力に満ちた三重の里山と歴史街道へ、心満たされる爽快なドライブに出かけてみませんか。