時を超えて息づく城下町や近江商人の足跡、そして現代に息づくアートと里山の美。滋賀の奥深い魅力を歩いて巡る旅へご案内します。

どこか懐かしさを感じる町並み、豊かな自然に抱かれた美しい景観、そして脈々と受け継がれる文化と歴史――。琵琶湖を中心に発展してきた滋賀県には、湖の恵みとともに育まれた独自の魅力が息づいています。「旅ごよみ」編集部が今回ご提案するのは、単なる絶景や社寺巡りだけではない、滋賀の「歴史と文化、そしてそれらが織りなす美しい風景」をじっくりと歩き、五感で味わう旅です。かつての城下町の賑わいや近江商人の心意気を感じさせる風情ある水郷、古き良き日本とモダンアートが融合したアートスポット、そして里山の豊かな自然と調和した新たな文化発信地まで。季節ごとに表情を変える湖国の風景の中で、時を超えて心に響く出会いがきっとあるでしょう。

春には桜が町並みを彩り、夏には新緑が目に鮮やか。秋には紅葉が歴史ある景観を深め、冬には静謐な雪景色が水墨画のような趣を見せます。どの季節に訪れても、その時期ならではの滋賀の美しさを発見できるはずです。今回は、徒歩での散策をメインに、公共交通機関やレンタカーを組み合わせながら、歴史的な町並みから現代の文化施設まで、滋賀が誇る奥深い魅力を紐解いていきます。旅のスタイルに合わせて、自分だけの「湖国の美探訪」をお楽しみください。

悠久の歴史を刻む国宝の城下町 彦根城

滋賀県彦根市にそびえ立つ彦根城は、江戸時代初期に築城された国宝五城の一つであり、その美しい姿は「天下の名城」として今も多くの人々を魅了し続けています。井伊直政の子である直継・直孝によって築かれ、以来、井伊家14代の居城として、幕末まで彦根藩の中心を担いました。天守は現存する数少ないものの一つで、その優美な破風と白漆喰の壁は、訪れる人々を歴史のロ舞台へと誘います。堀や石垣、櫓(やぐら)なども良好な状態で保存されており、城郭全体から当時の築城技術の高さや堅牢な構造をうかがい知ることができます。

彦根城が持つ歴史的背景は深く、関ヶ原の戦いの後に徳川家康が井伊直政に命じて築城が始まったと言われています。当初は佐和山城が居城でしたが、より防衛に適した地として彦根山が選ばれました。琵琶湖に面した立地は、水運を利用した物資の輸送にも有利で、経済的な発展にも寄与しました。城下町は、城を中心に碁盤の目状に整備され、武家屋敷や町家が軒を連ね、商業都市としても栄えました。現代に至るまで、その面影を色濃く残しており、散策するだけでも往時の雰囲気に浸ることができます。

彦根城の見どころ・楽しみ方

おすすめの時間帯・季節と混雑を避けるコツ

春の桜、秋の紅葉シーズンは特に美しく、観光客で賑わいます。混雑を避けたい場合は、開城直後の午前中や閉城間際が比較的空いているでしょう。新緑が美しい初夏や、雪景色が広がる冬も趣があり、比較的ゆったりと見学できます。

アクセスとおおよその所要時間

JR彦根駅から徒歩約15分。大阪・京都方面からはJR琵琶湖線で彦根駅までアクセスし、そこから徒歩で向かいます。京都から彦根駅までは約50分、大阪から約1時間20分です。

あわせて寄りたい周辺のグルメや立ち寄りスポット

城下町には、近江牛を味わえる老舗レストランや、地元食材を使ったカフェ、和菓子店などが点在しています。特に、夢京橋キャッスルロード周辺は、江戸時代の町並みを再現したような趣があり、お土産探しや食べ歩きに最適です。彦根城博物館では、井伊家ゆかりの品々や甲冑、美術工芸品が展示されており、より深く歴史に触れることができます。

近江商人の息吹を感じる水郷の町 近江八幡 八幡堀

滋賀県近江八幡市に位置する八幡堀は、豊臣秀次が八幡山城を築城した際に、城下町を整備するために開削された運河です。琵琶湖と町を結ぶ役割を担い、近江商人が全国へと商品を運び出すための重要な水路として発展しました。堀の両岸には白壁の土蔵や町家が軒を連ね、その景観は「近江八幡の歴史的町並み」として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。時代劇のロケ地としても度々使用され、その風情ある佇まいは多くの人々を魅了しています。

八幡堀の歴史は、安土桃山時代に遡ります。豊臣秀次がこの地を治めるようになってから、彼は商業を奨励し、楽市楽座の制度を導入しました。これにより、近江八幡は商都として大いに栄え、ここを拠点とする商人たちは「近江商人」として全国で活躍することになります。彼らは「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」の精神を掲げ、単なる利益追求だけでなく、地域社会への貢献を重んじました。八幡堀は、そうした近江商人の物流の拠点であり、彼らの活躍を支えた生命線でもあったのです。

八幡堀の見どころ・楽しみ方

おすすめの時間帯・季節と混雑を避けるコツ

春は桜並木、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色と、四季折々の表情が楽しめます。特に桜と紅葉の時期は観光客が多いので、平日や早朝を狙うのがおすすめです。夕暮れ時は、町並みがライトアップされ、ロマンチックな雰囲気に包まれます。

アクセスとおおよその所要時間

JR近江八幡駅から近江鉄道バスで「八幡堀(大杉町)」または「大杉町」下車、徒歩すぐ。近江八幡駅からバスで約10分です。大阪・京都方面からはJR琵琶湖線で近江八幡駅までアクセスします。京都から近江八幡駅までは約35分、大阪から約1時間です。

あわせて寄りたい周辺のグルメや立ち寄りスポット

近江八幡の旧市街には、近江牛の専門店や、丁稚羊羹(でっちようかん)などの伝統的な和菓子店、おしゃれなカフェが点在しています。また、八幡山ロープウェーに乗って八幡山頂上へ行けば、琵琶湖と近江八幡市街の絶景を一望できます。

ガラス工芸とレトロな町並みが魅力 黒壁スクエア

滋賀県長浜市に位置する黒壁スクエアは、古い商家や銀行などの歴史的建造物を再生し、ガラス工芸を中心とした文化施設やショップ、レストランなどが集まる観光スポットです。その名の通り、黒い壁の建物が特徴的で、明治時代から昭和初期にかけてのレトロな雰囲気が漂います。江戸時代には北国街道の宿場町として栄え、琵琶湖の水運を利用した商業都市としても発展しました。古き良き日本の町並みと、新旧が融合したアートが楽しめる、長浜を代表するエリアです。

黒壁スクエアの歴史は、明治33年(1900年)に建造された旧国立第百三十銀行長浜支店(現在の黒壁ガラス館)に始まります。この建物が黒い漆喰壁と洋風建築の美しいコントラストをなし、地域のシンボルとなっていました。昭和に入り、一時的な衰退期を迎えますが、1980年代後半に地域活性化の取り組みとして、この黒壁の建物を核としたガラス工芸の拠点づくりが始まりました。そして、歴史的建造物の保存と再生、新たな文化の創出が見事に融合し、現在の黒壁スクエアへと発展していったのです。

黒壁スクエアの見どころ・楽しみ方

おすすめの時間帯・季節と混雑を避けるコツ

年間を通して観光客が訪れますが、週末や祝日は特に賑わいます。比較的空いている平日の午前中がおすすめです。秋の紅葉シーズンや、冬のイルミネーション期間も美しいですが、混雑が予想されます。ガラス体験は事前予約が確実です。

アクセスとおおよその所要時間

JR長浜駅から徒歩約5分。京都・大阪方面からはJR琵琶湖線で長浜駅までアクセスします。京都から長浜駅までは約1時間15分、大阪から約1時間40分です。

あわせて寄りたい周辺のグルメや立ち寄りスポット

長浜城歴史博物館は、豊臣秀吉が初めて築城した長浜城跡に建ち、長浜の歴史を学ぶことができます。また、長浜曳山まつり会館では、ユネスコ無形文化遺産に登録された曳山まつりの華やかな文化に触れることができます。グルメでは、長浜ラーメンや焼鯖そうめんなど、地元の味を堪能できるお店が多くあります。

自然と建築が織りなすアート空間 ラ コリーナ近江八幡

滋賀県近江八幡市にある「ラ コリーナ近江八幡」は、和菓子の「たねや」と洋菓子の「クラブハリエ」を展開する株式会社たねやグループのフラッグシップ店です。「自然を愛し、自然に学び、自然と共に」をテーマに掲げ、広大な敷地の中に田んぼや畑、カステラショップ、パン工房、カフェなどが点在しています。建築家・藤森照信氏が手がけたメインショップは、土や植物をふんだんに使った独創的なデザインで、まるでジブリの世界に入り込んだかのような、温かくも幻想的な空間が広がっています。

「ラ コリーナ」とは、イタリア語で「丘」を意味します。この施設は、単なる商業施設ではなく、食と自然、そして建築が一体となった「里山」を表現しています。創業者が目指したのは、自然の恵みを大切にし、地域に根差した菓子作りを未来へと繋ぐこと。敷地内の田んぼで米を育て、自社製品の材料として活用するなど、循環型の農業にも取り組んでいます。また、緑豊かな敷地は、季節ごとに様々な表情を見せ、訪れる人々に安らぎと発見を提供してくれます。環境に配慮した設計や、伝統技術と現代デザインの融合は、まさに「湖国の美」を現代に再解釈した場所と言えるでしょう。

ラ コリーナ近江八幡の見どころ・楽しみ方

おすすめの時間帯・季節と混雑を避けるコツ

特に週末や祝日は大変混雑します。午前中の早い時間帯や、閉館間際を狙うと比較的ゆったりと過ごせるでしょう。新緑の春から夏、紅葉が美しい秋がおすすめです。冬は少し寂しい雰囲気になりますが、静かで落ち着いた時間を過ごしたい方には良いかもしれません。

アクセスとおおよその所要時間

JR近江八幡駅から近江鉄道バスで「北之庄」下車、徒歩すぐ。近江八幡駅からバスで約10分です。大阪・京都方面からはJR琵琶湖線で近江八幡駅までアクセスします。京都から近江八幡駅までは約35分、大阪から約1時間です。車でのアクセスも可能ですが、駐車場の混雑には注意が必要です。

あわせて寄りたい周辺のグルメや立ち寄りスポット

近江八幡市内には、八幡堀や日牟禮八幡宮など、歴史的な観光スポットが多くあります。ラ コリーナでスイーツを楽しんだ後は、八幡堀周辺を散策して、近江八幡の歴史と文化に触れる一日を過ごすのも良いでしょう。また、近江八幡駅周辺には地元の食材を使ったレストランやカフェもあります。

モデルプラン:時を超えて巡る滋賀、歴史と文化の1日旅

滋賀の奥深い歴史と現代アート、そして美しい里山が融合した文化を存分に味わう、半日~1日のモデルプランです。

旅のヒント

滋賀の歴史と文化を巡る旅をより快適にするためのヒントをご紹介します。

よくある質問

滋賀の旅に関して、よくある質問とその回答をまとめました。

Q. 滋賀を効率よく観光するには、どの交通手段がおすすめですか?
A. JRと路線バスを組み合わせるのが基本です。彦根、近江八幡、長浜など、主要な観光地はJRの駅周辺にあり、そこから路線バスでアクセスできるスポットが多くあります。琵琶湖を一周する「びわ湖一周レンタサイクル」など、レンタサイクルも人気ですが、今回は複数の市を巡るため、電車とバス、またはレンタカーが便利でしょう。

Q. 滋賀観光で訪れるべき定番のグルメは何ですか?
A. 近江牛は全国的にも有名なブランド牛で、すき焼きやステーキ、近江牛を使った丼ものなどが楽しめます。また、琵琶湖の恵みである鮎や鮒寿司などの湖魚料理も滋賀ならではの味覚です。長浜では焼鯖そうめん、近江八幡では丁稚羊羹などもおすすめです。

Q. 歴史にあまり詳しくないのですが、それでも楽しめますか?
A. はい、もちろん楽しめます。彦根城や八幡堀のような歴史的スポットは、その美しい景観や雰囲気だけでも十分に魅力的です。博物館や資料館では、展示を通して分かりやすく歴史を学ぶことができますし、ガイドツアーに参加すれば、より深い話を聞くこともできます。ラ コリーナ近江八幡のような現代的なアート空間も盛り込んでいるので、歴史だけでなく多様な魅力を満喫できるでしょう。

Q. お土産におすすめの品はありますか?
A. 近江牛関連商品、鮒寿司などの湖魚加工品、丁稚羊羹をはじめとする和菓子、地酒、そして黒壁スクエアで手に入るガラス工芸品などが人気です。また、たねやグループのお菓子は、ラ コリーナ近江八幡だけでなく、滋賀県内の主要駅などでも購入できます。

まとめ

滋賀県は、琵琶湖の雄大な自然だけでなく、歴史が息づく城下町や水郷、そして現代の感性と融合したアート空間まで、多様な魅力に満ちた場所です。今回ご紹介した彦根城、八幡堀、黒壁スクエア、ラ コリーナ近江八幡を巡る旅は、古き良き日本の風情と、新しい文化の息吹を五感で感じられる、特別な体験となるでしょう。歴史ある町並みを歩き、美しい建築に触れ、豊かな自然の中で美味しいものを味わう――。それぞれのスポットが持つ物語に耳を傾けながら、心に残る湖国の旅をお楽しみください。きっと、あなたの心に深く響く、忘れられない思い出が生まれるはずです。