鳥取県が誇る三朝温泉や皆生温泉など個性豊かな名湯を特集。歴史ある温泉地や風情あふれる街並み、絶景スポットを巡る癒しの旅プランをご紹介します。

豊かな自然と深い歴史に抱かれた鳥取県は、実は県内各地に表情豊かな温泉地が点在する「温泉王国」でもあります。古くから湯治場として人々を支えてきた山間の古湯から、日本海の雄大な景観を望む海辺の温泉郷、汽水湖の湖上に浮かぶように佇む湯の町、さらには県庁所在地の駅前市街地に湧き出る珍しい温泉まで、そのバリエーションの豊かさは全国的にも際立っています。

鳥取の温泉巡りの魅力は、単に湯に浸かるだけにとどまりません。温泉地の周辺には、修験道の霊場として知られる古刹や、江戸・明治の面影を遺すレトロな街並み、そして鳥取砂丘に代表されるダイナミックな自然景観が広がっており、湯めぐりとあわせた散策や文化探訪が楽しめます。季節ごとに見せる表情も多彩で、新緑や紅葉の季節はもちろん、冬には旬を迎える松葉ガニをはじめとする日本海の味覚と温泉の温もりが至福のひとときを約束してくれます。本記事では、旅のスタイルや好みに合わせて巡りたい鳥取県内の代表的な温泉地と、あわせて訪ねたい周辺の魅惑的なスポットを詳しく解説します。

世界屈指のラドン含有量を誇る湯の街「三朝温泉と三徳山」

鳥取県の中央部に位置する三朝町(みささちょう)に湧く「三朝温泉」は、800年以上の長い歴史を誇る名湯です。その開湯にまつわる伝説は味わい深く、源義朝の臣下であった大久保太刀之進が、旅の途中で白い狼を助けたところ、夢枕に妙見大菩薩が現れ、感謝のしるしとして湧出場所を教えてくれたと伝えられています。「三つの朝を迎えると病が治る」とされることから「三朝」と名付けられたとも言われ、古くから心身を癒やす湯治場として多くの人々に親しまれてきました。

三朝温泉の最大の特徴は、世界でも有数の含有量を誇るラドン(放射能泉)です。微量の放射線が身体を刺激することで新陳代謝を促進し、免疫力や自然治癒力を高める「ホルミシス効果」が期待できる温泉として、医療・保養の面からも注目を集めています。温泉街には、三徳川(みとくがわ)の清流に沿って昭和の面影を残す木造旅館が立ち並び、湯けむりとせせらぎの音が情緒あふれる空間を作り出しています。さらに三朝温泉の奥には、山岳信仰の聖地として知られる三徳山(みとくさん)が聳え立ち、歴史と信仰の深さを物語っています。

三朝温泉を訪れるおすすめの季節は、山々が美しく萌え出る春の新緑期や、渓谷が赤や黄に染まる秋の紅葉シーズンです。また、混雑を避けてゆっくり温泉街を散歩したい場合は、宿泊客のチェックアウト後からチェックイン前の午前10時〜午後2時頃の時間帯が比較的静かでおすすめです。

アクセスは、JR山陰本線「倉吉駅」から路線バスを利用して約20分。お車でお越しの場合は、中国自動車道「院庄IC」または米子自動車道「湯原IC」から約45分〜50分で到着します。

あわせて楽しみたいグルメとしては、地元で採れる栃の実を使った伝統の「栃餅(とちもち)」や、冬場に解禁となる「松葉ガニ」のフルコース、さらに鳥取の豊かな自然が育んだ「鳥取和牛」のステーキなどが挙げられます。温泉街のお食事処や和菓子店で、滋味豊かな地元の味をご堪能ください。

レトロな情景が広がる湯と商人の町「倉吉白壁土蔵群と関金温泉」

鳥取県中部の中心都市である倉吉市(くらよしし)は、室町時代の打吹城(うつぶきじょう)の城下町として栄え、江戸時代から明治時代にかけては陣屋町・商業都市として発展を遂げました。市街地を流れる玉川沿いには、当時の面影を今に伝える白壁の土蔵や赤瓦の商家が整然と並び、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。白い漆喰壁と黒い焼杉板のコントラスト、そして屋根を彩る赤い琉球瓦が美しい情景を作り出しています。

この歴史ある城下町から少し足を延ばした倉吉の奥座敷に位置するのが、約1200年前に行基菩薩によって発見されたと伝わる「関金温泉(せきがねおんせん)」です。関金温泉のお湯は極めて透明度が高く、古くから「白金の湯(しらがねのゆ)」と称されてきました。無色透明無臭の極上の湯は肌当たりが柔らかく、三朝温泉と並ぶ高い放射能泉の成分を含んでいます。華やかな温泉街とは一味違う、静けさと素朴な情緒が漂う隠れた名湯です。

このエリアを巡るには、店舗や施設が動き出す午前10時頃からのスタートがベストです。散策の混雑を避けたい場合は、平日の午前中の早い時間帯に白壁土蔵群を訪れ、午後にゆっくり関金温泉で湯浴みを楽しむルートがスムーズです。

アクセスは、JR山陰本線「倉吉駅」より路線バスで「倉吉白壁土蔵群」まで約12分。関金温泉へは倉吉駅から路線バスで約30分ほどとなります。車の場合は米子自動車道「湯原IC」より約30分でアクセス可能です。

周辺グルメの代表格は、倉吉名物の「餅しゃぶ」です。十二単(ひとえ)に見立てた色とりどりの薄切り餅を、厳選された出汁にくぐらせていただく料理で、目でも舌でも楽しめます。また、倉吉の古い町並みに溶け込む古民家カフェで味わう、石臼で挽いたコーヒーと手づくり和菓子のセットも休憩にぴったりです。

潮風と名湯が織りなす日本海の湯治場「皆生温泉」

鳥取県西部の米子市(よなごし)に位置する「皆生温泉(かいけおんせん)」は、美保湾(弓ヶ浜)の美しい海岸線に面した日本海側を代表する海辺の温泉郷です。明治30年(1897年)、地元の漁師が海岸近くの浅瀬から熱湯が湧き出しているのを発見したのが始まりとされています。海から湧き出る温泉は国内でも非常に珍しく、「山陰の熱海」の異名をとるほど豊かな湯量を誇ります。

皆生温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム塩化物泉で、源泉温度が高く塩分を含んでいるため、保温効果が極めて高いのが特徴です。入浴後は湯冷めしにくく、肌がすべすべになることから「美肌の湯」としても高い人気を集めています。温泉街の目前には弓なりの砂浜と青い海が広がり、背後には中国地方最高峰の「大山(だいせん)」を仰ぎ見るという、海と山が調和した絶景ロケーションも大きな魅力です。

皆生温泉を訪れるのに最も魅力的な時間帯は、空と海が刻一刻と表情を変える夕刻から夜にかけての時間帯です。季節としては、日本海の水平線に漁火が輝く夏から秋、あるいは蟹料理が本格化する冬場が特におすすめです。混雑を避けたい場合は、日帰り入浴客が集中する夕方の時間帯を避け、昼前後や早朝の散歩時間を活用すると良いでしょう。

アクセスは、JR山陰本線・伯備線「米子駅」から路線バスで約20分。車をご利用の場合は、米子自動車道「米子IC」から約10分と交通利便性にも優れています。

皆生温泉周辺のグルメといえば、車で約20分ほどの距離にある境港から直送される「新鮮な海鮮」です。冬の松葉ガニや紅ズワイガニはもちろん、春から夏にかけての生マグロ、鳥取特産のモサエビなど、旬の魚介類をふんだんに盛り込んだ海鮮丼や握り寿司は絶対に味わいたい逸品です。

東郷湖の水面に浮かぶ幻想的な温泉郷「はわい温泉・東郷温泉」

鳥取県の中央部に位置する湯梨浜町(ゆりはまちょう)には、県内でも有数の風光明媚な景観を誇る「東郷湖(とうごうこ)」があります。この汽水湖の西岸に「はわい温泉」、東岸に「東郷温泉」という二つの温泉地が向かい合うように存在しています。かつて「羽合」と表記されていたことからその名がついた「はわい温泉」は、江戸時代に湖底から自然湧出していた温泉を、地元の町人が舟を浮かべて利用し始めたのが始まりと伝えられています。

最大の特徴は、全国的にも珍しい「湖の中に湧く温泉」であることです。湖畔や湖上に突き出るように建てられた旅館が多く、露天風呂や客室からはまるで湖の上に浮かんでいるかのような幻想的な感覚を味わえます。泉質はナトリウム・カルシウム塩化物・硫酸塩泉で、さらりとした優しく温まるお湯が特徴です。静かな湖面と山々の緑、そして朝夕の光が織りなす水辺の情景は、訪れる人の心を静かに解きほぐしてくれます。

おすすめの時間帯は、朝もやが湖面を覆う神秘的な早朝や、夕日が対岸の山々に沈み湖面が黄金色に染まる夕刻の時間帯です。秋から冬にかけての空気の澄んだ季節は、湖面への映り込みが特に美しく映えます。

アクセスは、JR山陰本線「倉吉駅」から車で約15分。公共交通機関の場合は、JR「松崎駅」から徒歩または路線バスで各温泉街へアクセスできます。車では山陰自動車道「泊東郷IC」または「ハワイIC」から約10分です。

この地域ならではの味覚としてずせないのが、東郷湖で獲れる「大和シジミ」です。大粒で濃厚な出汁が出るシジミを使った「シジミ汁」や「シジミラーメン」は、旅の途中の身体に優しく染みわたります。また、湯梨浜町特産の「二十世紀梨」を使った果汁たっぷりのスイーツやソフトクリームも人気を集めています。

県庁所在地に湧く全国的にも珍しい街中温泉「鳥取温泉・吉岡温泉」

鳥取県の東部、鳥取市には全国的にも極めて珍しい温泉が存在します。それが、県庁所在地であり主要駅である「JR鳥取駅」のすぐ近くに湧き出る「鳥取温泉」です。明治41年(1908年)、市街地の井戸掘削中に偶然温泉が湧出したのが始まりとされており、繁華街や住宅地の中に温泉旅館や銭湯が自然に溶け込んでいます。ビジネスや観光の拠点としながら、手軽に本格的な天然温泉を楽しめるのが最大の強みです。

また、鳥取市街地から車で20分ほど西へ走った湖山池(こやまいけ)の南岸には、約1000年以上の歴史を持つ「吉岡温泉(よしおかおんせん)」がひっそりと佇んでいます。薬師如来のお告げによって発見されたと伝わる古い湯治場で、菅原道真の知遇を得た人物にまつわる伝承など歴史の深さを感じさせます。鳥取温泉の賑やかさと、吉岡温泉の静けさという対照的な二つの湯を巡りつつ、車で少し足を延ばせば広大な「鳥取砂丘」へも立ち寄れる、鳥取東部ならではの魅力的な温泉エリアです。

鳥取温泉の銭湯巡りは夕方から夜の時間帯が地元らしさを感じられておすすめですが、鳥取砂丘や白兎神社をあわせて巡るなら、日中の涼しい早朝や、夕日が日本海に沈む夕刻の時間帯に設定すると快適です。

アクセスは、鳥取温泉へはJR「鳥取駅」から徒歩数分〜10分圏内。吉岡温泉へは鳥取駅から路線バスで約30分です。鳥取砂丘へは鳥取駅から路線バスで約20分と、非常にコンパクトに移動できます。

周辺の食文化覚書として見逃せないのが、鳥取港で水揚げされる新鮮な魚介類です。特に甘みが強く幻のエビと呼ばれる「モサエビ」の刺身や塩焼き、鳥取市民のソウルフードである「素ラーメン(出汁スープに中華麺を入れたもの)」、そして鳥取砂丘の特産であるシャキシャキとした「らっきょう」を使った料理は、鳥取東部を訪れたらぜひ味わいたい味覚です。

鳥取名湯巡り 1泊2日モデルプラン

鳥取県内の多彩な温泉地と見どころを効率よく巡る、車を利用した1泊2日の王道モデルプランをご紹介します。

鳥取温泉旅をより快適に楽しむための旅のヒント

鳥取県の温泉旅をいっそう充実した満足度の高いものにするための実用的なポイントをまとめました。

【おすすめの季節】
四季折々の魅力がありますが、特におすすめなのは「秋(10月〜11月)」と「冬(12月〜2月)」です。秋は紅葉に彩られた山々や散策に適した気候が魅力で、冬は解禁となる松葉ガニをはじめとする海鮮グルメの最盛期であり、雪景色を眺めながら入る露天風呂は格別の風情があります。

【服装と持ち物】
鳥取の温泉地は、三徳山や白壁土蔵群など「歩く」スポットが多く含まれます。そのため、履き慣れたスニーカーや歩きやすい靴が必須です。また、各地に足湯が点在しているため、カバンの中に小型のハンドタオルを1〜2枚忍ばせておくと非常に便利です。冬場は山陰特有の「弁当忘れても傘忘れるな」という言葉通り天候が変わりやすいため、折りたたみ傘と十分な防寒着を準備しておきましょう。

【雨の日の過ごし方】
万が一雨が降った場合でも、鳥取の温泉旅は十分に楽しめます。例えば三朝温泉や皆生温泉では、雨音を聞きながらじっくり温泉宿での湯巡りやサロンでの寛ぎを堪能するのがおすすめです。また、倉吉白壁土蔵群では蔵を活用したショップやカフェでの屋内散策が楽しめますし、鳥取市街地の銭湯巡りなども天候に左右されにくい立ち寄りプランとして最適です。

よくある質問

Q. 鳥取の温泉地で日帰り入浴や足湯を楽しめる場所は多いですか?
A. はい、非常に充実しています。三朝温泉の河原風呂や株湯、皆生温泉の海沿いの足湯、はわい温泉・東郷温泉の湖畔の足湯など、無料で利用できる足湯施設が各地に整備されています。また、多くの温泉旅館や日帰り温泉施設が日帰り入浴を受け入れているため、宿泊なしのドライブ旅でも気軽に湯巡りが楽しめます。

Q. 温泉地間の移動は公共交通機関だけで回れますか?
A. JR山陰本線と路線バスを組み合わせることで、鳥取温泉、吉岡温泉、はわい温泉、三朝温泉、皆生温泉などの主要な温泉地へアクセスすることは十分可能です。ただし、複数の温泉地や周辺観光スポットを効率よく1日で巡る場合は、移動時間の自由度が高いレンタカーや自家用車のご利用をおすすめします。

Q. 冬に車で温泉巡りをする際、スタッドレスタイヤは必要ですか?
A. 冬期(12月中旬〜3月上旬頃)に鳥取県内をドライブする場合は、スタッドレスタイヤの装着が必須となります。沿岸部の皆生温泉などは雪が少ない日もありますが、山間部に位置する三朝温泉や三徳山周辺、鳥取自動車道などの峠越えルートでは積雪や路面凍結が発生しやすいため、事前のアタッチメント準備と慎重な運転を心がけてください。

まとめ

山間の歴史ある湯治場・三朝温泉から、白砂青松の海に臨む皆生温泉、湖面に浮かぶ景観が幻想的なはわい温泉・東郷温泉、そして歴史散策と組み合わせて訪れたい関金温泉や鳥取温泉・吉岡温泉まで、鳥取県には魅力あふれる温泉地が勢ぞろいしています。

それぞれの温泉が持つ独自の泉質や歴史背景、そして周辺に広がる豊かな自然やレトロな街並み、獲れたての海の幸・山の幸は、訪れる人の心と身体を温かく解きほぐしてくれます。忙しい日常を少し離れて、風情豊かな湯けむりと出逢う鳥取の温泉巡りへ、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。